2023年09月26日

外科手術

血管肉腫(後腹膜原発腫瘍)

今回の症例は、後腹膜原発の血管肉腫を発症した症例です。
後腹膜とは腹膜の外側を指します。
腎臓・尿管・膀胱といった尿路や、大動脈・大静脈といった大血管が位置している場所です。

症状

今回の子は、散歩後から調子が悪いとのことで夜間診療でご来院されました。

・ハアハアしている
・お腹が痛そう
・震えている

血液検査、レントゲン検査、超音波検査を実施しました。
検査の結果、腎臓周囲に影(腫瘍性病変)が見つかりました。

治療方法

経皮下での生検検査はリスクが高いと判断しました。
腎臓の血液検査で機能的に問題のないことを確認し、腫瘍と片側の腎臓摘出を実施いたしました。
腎臓は血流も豊富で、出血リスクの高い臓器の一つです。
手術では、腫瘍血管を傷つけないよう注意を払い進行いたしました。

手術後は片側の腎臓での生活になるため、術中の麻酔管理にもに注意し手術を行いました。

治療後

病理検査では、後腹膜原発の血管肉腫という診断でつきました。
血管肉腫は悪性度が高く、術後の補助治療(抗がん剤など)が必要になります。
血管肉腫の予後は、部位によっても報告に多少のばらつきはあります。
脾臓と肝臓と心臓に関してはほぼ同等の予後と言われています。
脾臓の血管肉腫の生存期間中央値は、
外科治療のみで19~86日、補助治療の併用で、141~79日と言われています。
今回の症例では、後腹膜原発の血管肉腫が腎臓被膜に癒着しているケースで、
報告も稀で、予後については一概に言えません。

しかしながら、術後は抗がん剤治療を併用し、腫瘍が見つかってから220日間戦ってくれました。

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