2023年01月11日

外科手術

膝蓋骨内包脱臼の外科治療

膝蓋骨脱臼とは?

膝のお皿が本来あるべきところからずれてしまうことで、後ろ足の膝関節に力が入らなくなり、歩き方に異常が出る病気です。

すべての犬種で脱臼が起こる可能性がありますが、中でもトイプードルやチワワ、ヨークシャテリアなどの小型犬は特に脱臼しやすい傾向があります。また、女の子の方が発症しやすく、発症率は男の子の約1.5倍だと言われています。

英語では”patellar luxation”と呼ばれます。
「パテラ」という言葉の方がなじみ深いかもしれませんね。

また、脱臼の仕方は大きく2パターンに分けられます。
①膝蓋骨内包脱臼
②膝蓋骨外方脱臼
②よりも①の方が発生頻度は高く、診察をしていても見かけることは多いです。
②は小型犬よりも大型犬の方が発生頻度は高いです。

膝蓋骨脱臼の症状は?

・痛み
・びっこをひいている
・足を浮かせている/地面につけない
・急に鳴く
・歩けない

初期の場合は痛みが発生しないこともあるため、脱臼に気付けないことが多々あります。
症状が進行するに伴い、足を浮かせる頻度が増えたり、時間が長くなったりします。
また、立っているときに膝をガクガク震えさせたり、遊んでいる最中に急にキャンキャン鳴いて痛がることも多いです。

脱臼は膝関節全体にダメージを与えており、骨へのダメージが蓄積すると骨の変形を、関節へのダメージが蓄積すると関節炎を起こし、最終的には歩けなくなることもあります
場合によっては、膝の靭帯が切れてしまうこともあります。

膝蓋骨脱臼の原因は?

原因としては、先天性と後天性があります。

先天性の場合
生まれつきひざの関節を覆う筋肉や靭帯、骨の形に異常があり、脱臼を起こしてしまうものです。
遺伝的要因が関与していると考えられていますが、はっきりとした遺伝子はわかっていません。
トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、チワワといった小型犬や
柴犬、ゴールデンレトリーバーなども発症が認められる病気です。

後天性の場合
外傷や事故などが原因で起こります。最も多いのは、高いところからの飛び降りや滑りやすい床の上での生活により、足やひざに負担がかかり発症するケースです。

膝蓋骨脱臼を予防するには?

先天的な場合は、防ぐ方法はありません。
症状のレベルにより治療方法は変わりますが、進行の有無を判断するための定期チェックが必要になります。
放置をしてしまうと、関節炎に繋がり、将来早くに歩けなくなったりする可能性もございますので注意が必要です。

後天的な場合の多くは外傷によるものです。
・体重管理
・滑りにくい環境づくり
が大切となります。

膝蓋骨脱臼の重症度は?

指標として触診検査によるグレード分類(Singeltonの変法)が用いられます。

大きく4つのグレードに分類されます。

グレード1膝蓋骨は触診で簡単に外せるが、手を離すと正しい位置に戻る。
グレード2膝を曲げ伸ばしするだけで、簡単に膝蓋骨が外れる。
グレード3膝蓋骨は常に外れたままだが、手で押すと元に位置に戻せる。
グレード4膝蓋骨は常に外れたままだが、手で押しても元に位置に戻らない。

進行するにつれて、関節はもちろん靭帯や腱、筋肉に負担がかかります。
骨の変形に発展してしまうと治療が難しくなってしまうこともあります。

膝蓋骨脱臼の検査は?

①身体検査(触診や視診など)
膝蓋骨脱臼を診断するうえで最も大切なのは、触診検査になります。
膝関節をまっすぐな状態(伸展位)と曲げた状態(屈曲位)にした時に、脱臼がないかどうかを診断を判断します。
また、膝関節だけでなく、両後ろ足の筋肉量も触って評価します。

触診だけではなく歩行検査をすることもあります。
足の使い方や、重心の移動の仕方を評価します。

②レントゲン検査
膝関節の位置や骨の変形の有無を評価するために用いられます。
膝関節の状態をX線画像で詳しく調べます。手術が適応となる場合は、術前計画のための計測にも用いられます。場合によってはCT検査を行うこともあります。なお、X線撮影では、外れた膝蓋骨が撮影時に正常な位置に戻る事があるため、熟知した獣医師の触診が重要です。

膝蓋骨脱臼の治療について

治療法は外科治療・内科治療・リハビリ治療の3つになります。

内科的治療
症状の緩和を目的として鎮痛剤の服薬やレーザーなどの使用により炎症を押さえます。完治は望めませんが、サプリメントや食事、環境改善により悪化を防ぐことは可能です。

外科的治療
症状に応じて、滑車溝(かっしゃこう)と呼ばれる膝蓋骨の受け皿となるくぼみを削る手術や、足のすねを正常に近い位置に移動させピンで留める手術などが必要となります。
また、筋肉が拘縮している場合は、ほどく処置が必要な場合もあります。​

リハビリ治療
根本治療ではなく、術後の補助治療として実施することが多いです。
脱臼を起こした足と、そうでない足で筋肉差が生じたり、歩行や重心の掛け方に違いが生じます。
リハビリでは、筋肉量の差異をなくすためのトレーニングを行なったり、凝り固まった筋肉を動きやすくするためのマッサージと運動が必要となります。

どの治療を選択すかは、病気の進行度や症状に応じてになります。
また、年齢なども検討し最善の選択をしていきます。

まずは、お気軽にご相談くださいませ。

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