炎症性乳癌
        はじめに
犬の炎症性乳がん(Inflammatory Mammary Carcinoma, IMC)は、非常に攻撃的で稀な乳腺腫瘍の一種であり、予後が非常に悪いとされる腫瘍です
疫学・発生頻度
- 犬の乳腺腫瘍の中でも 1〜5%程度と非常に稀。
 - 主に高齢の未避妊雌犬に多くみられる。
 - 一部研究では、避妊手術の未実施がリスク因子とされる(Cassali et al., 2017)。
 
病理と病態
- 急速な進行性炎症反応を特徴とし、皮膚の発赤、浮腫、潰瘍形成が典型的。
 - 真の炎症ではなく、腫瘍細胞によるリンパ管浸潤が原因。
 
診断
臨床症状
- 急激な乳腺の腫脹
 - 皮膚の熱感・発赤
 - 痛みを伴うことも多い
 - 発熱・元気消失
 
補助診断
- 画像診断(X線/超音波):肺転移・リンパ節転移の評価
 - 細胞診や生検:確定診断には組織学的検査が必要
 
治療
治療は極めて困難で、以下のような戦略が報告されています:
外科手術
- 基本的には非適応(すでに局所浸潤・転移が広がっていることが多い)
 
化学療法
- ドキソルビシン、カルボプラチン、シクロホスファミドなどが報告あり。
 - 効果は限定的で、生存期間の延長効果は不明確。
 - 分子標的薬