2024年05月12日

循環器

猫の心筋症

猫の心筋症とは?

猫の心筋症は、心臓の筋肉である心筋が異常になる病気です。具体的には、心臓の筋肉に他の疾患がみられず、心筋の形や働きが異常になる心筋障害を引き起こす病気を指します。最も多いタイプは肥大型心筋症(HCM)と呼ばれるもので、高齢のネコでよく見られます。肥大型心筋症は、心臓の筋肉が肥大する病気で、遺伝的な要因やタウリンの欠乏が関与していることが知られています。

心筋症の種類

肥大型心筋症

心筋が分厚くなり、心臓の中にある血液を溜めておく空間が狭くなって送り出せる血液量が減ります。この型では血栓(血液の塊)ができやすく、特に左右の後ろ足に血液を運ぶ動脈の分岐部分に詰まることが多いです。血栓塞栓症により、両方の後ろ足が冷たくなり、麻痺を起こすことで後ろ足を引きずるようになります。


拡張型心筋症

心筋が薄く伸びて収縮力が弱まり、血液を送り出せなくなる病気です。原因の一つにタウリン欠乏が挙げられます。現在では激減していますが、ほとんどが原因不明(遺伝的要因)の拡張型心筋症です。

拘束型心筋症

心筋の内側の組織が硬くなり、心臓がうまく動けなくなる病気です。感染症との関連も指摘されていますが、はっきりとした原因は分かっていません。

原因は?

心筋症の原因は不明なことが多いですが、特に拡張型心筋症の場合、タウリンの欠乏が発症に関与していることがわかっています。ただし、現在は栄養基準を満たしたフードの普及により発症数は減少しています。また、遺伝が関与する場合もあります。

診断方法

猫の心筋症の診断は、以下の方法で行われます。

  1. 心臓エコー検査(心エコー図検査): 心筋の肥大を直接観察できる検査です。
  2. 血液検査: 心臓マーカー(NT-proBNPなど)の値を調べます。

治療方法

猫の心筋症の治療は対症療法が主です。根本的に治す方法はありませんが、病期により異なる治療が行われます。

  • 心不全の場合: 酸素吸入、利尿薬、強心薬、胸水抜去(胸水貯留がある場合)などが中心です。
  • その他、内服が飲める状態であればACE阻害薬、抗血栓薬(動脈血栓塞栓症併発時)、抗不整脈薬が用いられます。

早期発見が重要で、定期的な心臓エコー検査と血液検査が推奨されています。

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